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導入事例

CASIO Business : Case Studies[導入事例]
ハンディターミナル・PDA
アスクル株式会社様
2007年2月26日掲載
ハンディターミナルと携帯電話を組み合わせ、配送パートナー企業と一体の情報システムを実現。
オフィス用品などの通信販売で業界をリードするアスクルでは、配送状況をお客様に示す配送サービスシステム「シンクロカーゴ」を開発した。このシステムでは、配送状況の入力のためにカシオのハンディターミナル「DT-950」と携帯電話をセットで用いており、配送状況を正確かつほぼリアルタイムで把握することを可能にした。このシステムによって、お客様へのサービス品質が向上しただけでなく、アスクルと配送パートナー企業との一体感も強まったという。
 
配送段階の状況をお客様に示すことでサービスの品質向上を目指す
アスクル ビジネスシステム
統括マネージャー 池田和幸氏
 
主に企業を相手とするオフィス通販業界では、企業のビジネスに影響するため、配送のスピードは非常に重要だ。アスクルでは社名の通り「明日来る」、すなわち翌日配送でスタートし、現在では都市部を中心として注文当日の配送も可能となっている。

このスピードを実現したアスクルにとって、次の目標は「配送状況の情報提供」だった。

「これまでは、お客様からのお問い合わせのうち、商品のお届け状況に関する内容が、とても多くありました」と、アスクル ビジネスシステム 統括マネージャーの池田和幸氏は語る。

「そのため、配送段階の情報を随時取り込んで、問い合わせがあった場合にもすぐ回答できるようにし、サービスレベルを向上させたいと考えていました。また、情報を集約することで配送の品質向上にもつなげたいという考えもありました」

商品がアスクルの物流センターを出るまでは、比較的容易に把握できる。しかしその後の配送段階では、全国各地で多数の運送会社へ委託しているアスクルにとって、リアルタイムの把握が難しい部分だった。

その荷物を積んだトラックは、今どのあたりにいるのか、もし商品が配達されなかった場合、その理由は何だったのか、といった情報を現場から収集する仕組みが求められていたのだ。そのためには、荷札の情報を読み込み、センターと通信する機能を持った端末を、各車両に備えなくてはならない。

大手の運送会社では、すでにこのようなシステムが導入され、宅配事業などに役立てられているが、中小の運送会社では、予算の都合もあって難しい。

そこでアスクルでは、自前の配送状況管理システムを持つ大手運送会社からはそのデータを提供してもらう一方、そうでない運送会社に対してはアスクルが端末を用意するという形を考えた。こうして、車両を保有していないリテーラー(荷主)としては初の試みに着手したのである。
 
Bluetoothと無線LANの両方を利用でき、かつ操作性の高い「DT-950」を採用
シンクロカーゴの構想は、かなり以前から進められていた。本格的なプロジェクトが立ち上がり、配送を委託している配送パートナー企業の詳細な業務内容把握がスタートしたのは2003年6月のこと。

特に重要な検討課題だったのは、実際に現場のドライバーが使う端末だった。その選定においては、まず通信コストを抑えるため、通信機能が大きなポイントとなった。

検討の初期段階では、このようなモバイル環境でリアルタイム通信を行うには、2G携帯電話のパケット通信が一般的だったが、コストが高いという課題があった。一方、当時普及しはじめていた3G携帯電話なら、通信コストを抑えられる見通しがあった。さらに、配送センター内では無線LANインフラが用意されているため、それをハンディターミナルで利用できればさらに通信コストを下げられる。

「そこで、ハンディターミナルと3G携帯電話との通信にBluetoothを、物流センター内では無線LANを使おうと考えました。しかし、実際にシステムインテグレーターと相談をしてみても、Bluetoothで携帯電話と通信したいというニーズは、当時は実現が困難でした」と池田氏は言う。

アスクルでは複数のシステムインテグレーターを当たったが、最終的に行き着いたのがカシオだったという。カシオのハンディターミナル「DT-950」は、シンクロカーゴに必要な2種類の通信方式を利用できる。

また、操作性の良さも大きなポイントだった。

「携帯電話でバーコードを読み取らせることも検討しましたが、さすがに使いにくいと分かりました。対して、DT-950は、バーコード読み取りの操作性も良く、また、OSにWindowsCEを採用しており、ポップアップ画面などの処理が可能ですから、使いやすい画面を容易に作れます。シンクロカーゴでは、DT−950上のアプリケーションも、カシオが開発してくれました」(池田氏)

アスクル ビジネスシステム
SCMシステム 李雨燮氏
DT-950が選ばれたのは2005年7月、シンクロカーゴのサーバ側システム開発に着手したのとほぼ同時期だった。2006年4月にはシンクロカーゴの検証がスタートした。

「カシオからは、DT-950と携帯電話を一緒に持ち運べるオリジナルケースを提案してもらいました。このケースには、お客様が不在だったなど、配送できなかった場合に読み込むバーコードも貼ってあって、それらを読み込むだけで処理を終えられます」と、アスクル ビジネスシステム SCMシステムの李雨燮氏は言う。

「システム開発の際には、ドライバーに実際に使ってもらって、その要望を反映させていきました。何度もバージョンアップを行ったのですが、素早い対応をしてくれたので、短期間で開発ができましたね」
 
配送パートナー企業とアスクルが一体になってサービスを展開できるように
実際にお客様が使える形でシンクロカーゴのサービスを開始したのは、2006年9月21日だった。

このシステムは、アスクル社内と配送パートナー企業、そしてアスクルのお客様それぞれが利用できるようになっている。

アスクルの社内では、主にお問い合わせセンターで使われている。お客様から配送状況に関するお問い合わせを受けた際、シンクロカーゴを利用して状況を調べ、すぐに回答できるようになった。

アスクル ビジネスシステム
SCMシステム 川瀬七生氏
 
また、配送パートナー企業も同じ画面を利用し、届け先や荷物に関する情報をアスクルとの間で共有できるようになっている。そのメリットを、アスクル ビジネスシステム SCMシステムの川瀬七生氏は、次のように説明している。

「これまで、配送パートナー企業の方々は託された荷物とお届け先の住所しか知りませんでしたが、シンクロカーゴでは、例えば同じお届け先に別の配送予定があるなどお客様の注文の切り口から情報を参照し配送サービスに役立てることができます。アスクルとしては、配送パートナー企業の方々と一体になって商品をお届けできるようになったと考えています」

さらに、配送パートナー企業の業務効率も向上した。シンクロカーゴの端末は、これまでモバイル端末を利用していなかった配送パートナー企業に対して貸与されている。そのような企業では、従来なら配送を終えて戻ってから配送した荷札の確認を行わねばならず、それだけで20〜30分の時間が費やされていたという。配送と同時に確認できるシンクロカーゴによって、確認の時間が実質的に不要となった。

「ドライバーの方々のモチベーションも変わってきたようです。お客様やコミュニケーターがシンクロカーゴを通じて配送状況を見ていたことになりますから、それを意識して動くようになったと思います」(李氏)
 
アスクル「シンクカーゴ」システム構成図
 
「DT-950M50S」と「シンクロカーゴ」における活用シーン
 
アスクル サプライ・チェーン・
マネジメントロジスティクス戦略企画
山名洋和氏
一方、アスクルのお客様自身も、発注した荷物の配送状況をアスクルのサイトから確認できるようになった。対象エリアは順次拡大中であり、2007年内には全国で利用可能になる見込みだ。

「配送状況の画面には、1日500以上のアクセスがあります。お客様が知りたいのは『いつ届くのか』という点ですが、シンクロカーゴによって電話やWebですぐに分かるようになりました。お客様からの電話にお応えするコミュニケーターにとっても便利になりました」と、アスクル サプライ・チェーン・マネジメント ロジスティクス戦略企画の山名洋和氏は、シンクロカーゴの効果を説明する。

今後、アスクルではシンクロカーゴのさらなる機能向上を進めていく方針だ。例えば配送情報の精度を向上させたり、配送までの時間を示せるようになったりといった機能強化が検討されている。

川瀬氏は、今後の展開について次のように語った。

シンクロカーゴで提供される「いつくるマップ」。ユーザーは、自分の荷物が現在どこにあるかを、地図上で確認できる。
「今は、情報の入り口を展開したところです。これから、その情報をいろいろな形で活用していきます。小売業・通信販売業であるアスクルにとって、お客様のもとへ毎日お伺いし直接会話をするドライバーはアスクルの大切な顔であり、お客様のことを最もよく知るパートナーです。シンクロカーゴを、そうしたドライバーとお客様とアスクルをいつでもどこでもシームレスにつなぐ基盤とし、さらにお客様のご要望にタイムリーに対応するサービスを拡充していきたいと思っています」
【導入製品・ソリューション】 ハンディターミナル DT-950